②上記のまとめ>心機能に効果ある中薬(薬理効果)
心拍出量をあげる |
人参、茯苓、附子、蟾酥。
+干地黄、鹿角膠、麝香、牛黄 (薏苡仁) |
冠血流量あげる |
丹参。紅花、白芍、桂枝、肉桂、熟地黄、附子、郁金、白芍、三七、郁金、麦門冬 |
末梢血管拡張 |
肉桂、白芍 |
肺機能改善 |
黄耆 |
頻脈改善 |
半夏 |
結論3
中医的に心不全に有効な中薬の分類
宗気の産生
(補肺健脾) |
黄耆、人参、茯苓、炙甘草 |
心陽(心陰)の鼓舞 |
附子、干地黄、鹿角膠、熟地黄、麦門冬、 |
開窮腥心 |
蟾酥、麝香、牛黄 |
温経通陽 |
桂枝、肉桂、乾姜 |
活血 |
丹参、紅花、郁金、三七、白芍、郁金 |
袪痰湿 |
薏苡仁、半夏 |
参考>救心(六神丸)
蟾酥5mg牛黄3mg麝香1mg人参25mg羚羊角6mg 真珠7.5mg龍脳 2.7mg 動物胆8mg添加物としてパラベン、トウモロコシデンプン、寒
梅粉、カルメロース、薬用炭を含有
5>老中医コメント
①刑锡波 気陰両虚、風熱襲肺>
人参、夾竹桃で補気強心した。治療中利水剤は使用しなかったが心陽回復すれば腎陽が元気になると水気は自然に消褪する。
症例 53女
「風湿性心臓病(リュウーマチ性)を数年患う、心悸気短、頭暈目弦、活動後症状加重、この2日発熱咳嗽、心悸喘息で横になれない、口唇チアノーゼ、呼吸困難、浮腫。脈拍128、体温38.7, BP95/65、下肢浮腫、脈右弦数、左細数不整、舌質紅、黄膩。」
弁証>心陰素虚、風熱襲肺、気陰両虚、心気不斂
①玉竹30石膏24麦門冬24杏仁12地竜12川芎10貝母10麻黄7.5西洋人参7.5朱砂1血竭0.6冰片0.15麝香0.12夾竹桃0.06
②施今墨
②-1 水腫があるとき
軽症 |
心陽を治療すれば有効である。黄耆、党参、桂枝、茯苓 |
重症 |
温腎壮陽、利水消腫が必要。
附子、白朮、桂枝、黄耆、防已
+赤茯苓、赤小豆、冬葵子、冬瓜子、車前草、旱蓮草 |
②-2 水腫あるときの対薬
腹部張満あるとき |
大腹皮、大腹子、厚朴、木香で理気除脹して行気すれば水巡る |
脾病横流四肢腫満あるとき |
莪朮、三稜、木香、檳榔子、大腹皮、郁李仁、+猪苓、沢瀉、茯苓 |
③邓铁涛
暖心方 |
紅参、熟附子、薏苡仁、橘紅 |
養心方 |
生晒参、麦門冬、半夏、茯苓、田三七 |
●基本
1)心衰は五臓六腑が関与するが心が本である。
2)心衰は気血陰陽両虚であるが心陰心陽が主である
3)心気虚が心衰の基本病機である。
心気虚から心気陰両虚、または心陽虚気虚になる。
4)標実があっても治療では補虚の上に実を瀉す
●薬剤
1)上記方剤では人参が主薬で益気する。附子を加えて温陽し
または麦門冬くわえて養陰する。「三七は人参と同じ科に属しているので益気強心の作用がある。」
2)補心気では人参、黄耆、白朮、炙甘草を使うが、それに五爪竜をよく使用する
3)心陰虚なら益気温陽の基礎の上に滋陰する。養心方では人参、茯苓、半夏は益気袪痰温陽するが麦門冬一味が心陰補い虚熱とる。もし袪熱が引き、気虚が突出していると益気扶陽する。
④妙法解析の老中医のコメント
1-1)
赵锡武 |
★①温陽利水、化湿するとするが、石膏についてなぜ使うか解説なし.心下痞満で石膏12、二診では胸悶になり石膏9。心下痞梗を軟堅するためであろう。
また心率快のためか?化熱? |
2)
李斯炽 |
●心不全は気短、水腫が多いので多くの医師は気虚、陽虚の弁証が多い。この例は補陰を主に終始加味した。 |
3)
岳美中 |
「内伤脾胃,百病由生」の李东垣の基本思想より、脾胃から着手した。
陽が水を化せないのは脾虚湿重によると考えた。脈滑弱、 |
5-2)施今墨 |
●心源性水腫の病は心にあるが、腎主水なので腎を治療して有効であった。脈沈遅 |
6)
张羹梅 |
脾虚湿盛として「党参18肉桂2.4白朮12茯苓皮18冬瓜皮12瓢箪30薏苡仁12川椒目3赤芍9」
しかし心陽虚の方剤、保元湯(黄耆、人参、肉桂、甘草、生姜)の処方にている。 |
6>木防已湯、九味檳榔湯の治療薬はどういう場合につかうか
また、脚気心とはどういう病態か。
①脚気(内科書451)
乾性脚気 |
多発性末梢神経障害が多い |
四肢の知覚鈍麻、腓腹筋握痛
腱反射の低下消失 |
湿脚気 |
心不全の徴候が強い。多くは両者の混在である |
末梢血管抵抗が減り脈圧増大し、酷いと右心不全、浮腫が増大。
●vitB1不足で細胞のTCAサイクルが乱れ、糖代謝が異常がおこる。それで末梢神経障害。また末梢血管抵抗が減少して浮腫になる。酷いと代謝性アシドーシスになり右心不全になる。 |
②九味檳榔湯と木防已湯、
湿脚気
ビタミンB1欠乏が急激に起こり、浮腫、知覚麻痺、運動麻痺。浮腫が強いと右心不全(脚気心)になる |
九味檳榔湯加呉茱萸茯苓(浅田宗伯)
●右心不全に対応した薬。
(脚気を治す薬ではない)
檳榔子、厚朴、陳皮、桂枝、紫蘇葉、木香、生姜、甘草、大黄、呉茱萸、茯苓
- 桂枝、甘草は強心利尿薬である。
|
うっ血肝(心下痞梗)、
呼吸困難、チアノーゼ
(右心不全)の軽い心不全 |
木防已湯(漢防已、石膏、人参、桂枝)
石膏について>
山本は利水作用あるとする。 |
③木防已湯の石膏について
山本巌。
中医処方解説。
くすりの事典 |
利水作用あり。越碑加朮湯、木防已湯 |
矢数 |
「煩躁、口渇を治し、心下痞梗を治す。胸間の水邪を除く。445」 |
中医処方解説 |
『利尿を主とし、炎症を鎮め、口渇を解し、桂枝の温性を緩和する。』
熱証なければ石膏のぞく。木防已湯去石膏加茯苓芒硝湯(利水を強めた方剤芒硝の瀉下作用で利水を補助する) |
実用中薬辞典 |
解熱作用、口渇軽減作用。マクロファージの貪食作用増加 |
金匱解説 |
「隔间支饮,其人喘满,心下痞坚,面色黧黑,其脉沉紧,得之数十日,医吐下不愈,木防已汤主之。虚者即愈,实者三日复发,复与不愈者,宜木防已汤去石膏加茯苓芒硝汤主之」
●痞堅を除き伏熱を解す。支飲であり、膈間に痰飲がある。しかし裏に堅実の邪があるときは石膏(辛甘大寒)ではなく芒硝の鹹寒で軟堅する。 |
7>山本巌の心不全治療
うっ血肺、うっ血肝 |
通導散合桂枝茯苓丸。
瘀血である |
うっ血肝と出血予防 |
竜胆瀉肝湯(一貫堂)加側柏葉
(温清飲+連翹、薄荷、木香、防風、車前子、竜胆草、炙甘草、沢瀉) |
呼吸困難(肺うっ血、肺水腫) |
茯苓杏仁甘草湯、 |
腎性浮腫
脚気心 |
七味降気湯加縮砂
(紫蘇葉、茯苓、木通、桑白皮、白檀、縮砂=利水作用
半夏、香附子、生姜、甘草、) |
湿脚気
ビタミンB1欠乏が急激に起こり、浮腫、知覚麻痺、運動麻痺。浮腫が強いと右心不全(脚気心)になる |
九味檳榔湯加呉茱萸茯苓(浅田宗伯)
檳榔子、厚朴、陳皮、桂枝、紫蘇葉、木香、生姜、甘草、大黄、呉茱萸、茯苓
- 桂枝、甘草は強心利尿薬である。
|
うっ血肝(心下痞梗)、呼吸困難、チアノーゼ(右心不全)の軽い心不全 |
木防已湯(漢防已、石膏、人参、桂枝)
石膏について>
①山本、矢数は「煩躁、口渇を治し、心下痞梗を治す。胸間の水邪を除く。445」 |
呼吸困難症軽症
(短気して微飲あり。左心不全) |
- 苓桂朮甘湯合八味地黄丸
苓桂朮甘湯も利尿作用、血管拡張作用あるので八味地黄丸と併用する。
- 八味地黄丸はうっ血性心不全に用いる。(強心作用、
利尿作用、血管拡張作用あるから)しかし強心作用は非常に弱いのでジギタリス併用する。地黄にもすこし強心作用がある。桂枝、附子は血管拡張作用と強心作用がある。(蟾酥も)。 |
呼吸困難症重症
(うっ血性心不全の浮腫、湿痰
浮腫、腹水、胸水) |
葶藶大棗瀉肺湯
(葶藶子、大棗)
葶藶子は瀉下作用は強くないので使いやすい。 |
8>動くと過呼吸になり、紙袋で呼吸したり、ソラナックス内服で改善するという。機序は?
①炭酸ガス換気応答が亢進している
心不全では、正常な人に比べて、CO2に対する呼吸中枢の感度が2倍くらいになっているといわれています。従って、昼間には過呼吸になっており、安静時ですでに一生懸命呼吸努力しています。従って、少し動いても(動くことにより筋肉でのエネルギー産生活動によるCO2の産生を生じる)、炭酸ガスを体外へ排出する呼吸活動が必要となり、容易に息切れを生じるのです。もちろん心不全による循環障害による部分もありますが。
②慢性心不全においてCO2 化学反射感受性がなぜ亢進するのかは十分解明されていないが、(我々の成績では)心不全患者の約7割でこの感受性の亢進が認められ、この異常は交感神経活動の亢進と密接に関連していた
心不全まとめ
1)病機 邓铁涛が説く病機
「心陽気(兼陰血)虚損が心不全の内因であり、瘀血水滞が標である。水腫には肺、脾、腎が関与するが心不全について言うと心陽不足が根本原因である。心陽気(兼陰血)から瘀血水滞ができ、これがまた陽気を損傷する悪循環に陥る。だから治療は補虚の上に活血化瘀、利水袪痰が主であり、標本を逆にしてはいけない」
2)心気と宗気
「心気の推動作用(宗気)が低下して、温煦作用も低下して心陽虚になり、腎陽虚から水泛上逆して、(肺水腫のため)横になれない」これが起坐呼吸(心不全)の中医病機である。宗気を生成するには黄耆、人参、炙甘草、茯苓が必要。水泛上逆には心陽虚が前提である
3)心不全で脈数になるのは心陰虚が関与しているようだ。心気陰両虚、心陰陽両虚など。
4)心不全に有効な中薬は
宗気の産生
(補肺健脾) |
黄耆、人参、茯苓、炙甘草 |
心陽(心陰)の鼓舞 |
附子、干地黄、鹿角膠、熟地黄、麦門冬、 |
開窮腥心 |
蟾酥、麝香、牛黄 |
温経通陽 |
桂枝、肉桂、乾姜 |
活血 |
丹参、紅花、郁金、三七、白芍、郁金 |
袪痰湿 |
薏苡仁、半夏 |
5)木防已湯は
膈間に痰飲またはうっ血肝から心下痞梗を形成して右心不全にもちいる。
(あるいはリウマチ熱かも)。 九味檳榔湯も右心不全に用いる。
6)施今墨> 水腫があるとき
軽症 |
心陽を治療すれば有効である。黄耆、党参、桂枝、茯苓 |
重症 |
温腎壮陽、利水消腫が必要。
附子、白朮、桂枝、黄耆、防已
+赤茯苓、赤小豆、冬葵子、冬瓜子、車前草、旱蓮草 |
7)邓铁涛
暖心方 |
紅参、熟附子、薏苡仁、橘紅 |
養心方 |
生晒参、麦門冬、半夏、茯苓、田三七 |
上記方剤では人参が主薬で益気する。附子を加えて温陽し
または麦門冬くわえて養陰する。心陰虚なら益気温陽の基礎の上に滋陰する。養心方では人参、茯苓、半夏は益気袪痰温陽するが麦門冬一味が心陰補い虚熱とる。もし袪熱が引き、気虚が突出していると益気扶陽する。 |