2>老中医のコメント
肝陽上亢の頭痛
●桑葉について |
肝陽上亢の偏頭痛には石類、甲殻類の重鎮潜降を使うがこれだけでは完全に下降できない。さらに辛涼清泄の薄荷、鉤藤、桑葉、菊花、蔓荊子をいれて上部から発散できる。肝火のときは、石類、甲殻類の重鎮以外に牡丹皮、山梔子、苦丁茶、竜胆草、黄芩をいれる。 |
6)程門雪 |
肝陽上亢で平肝清脳する、珍珠母、紫貝歯、菊花、連翹で。夜交藤、鉤藤で鎮静通絡する、
桑葉、白蒺藜で散風熱して止痛。旋覆花、代赭石で降逆虚誕。 |
12-3)孙一民 |
肝陽夾湿の頭痛には
桑葉、菊花、蔓荊子、荷葉、連翹、白蒺藜で疏風清熱平肝、清陽を升発する。鉤藤、白僵蚕、珍珠母で清熱平肝、熄風解痙。葛根は退熱、解痙通絡。夜交藤は安神通絡、川芎は活血通絡止痛、 |
12-4)孙一民 |
肝陽上亢、瘀血 |
①涼肝薬物は清脳でき、熄風は神経を伸びやかにできる、活血薬は血液循環改善する
②羚羊角、石決明,桑葉、菊花、白蒺藜、夏枯草、連翹、鉤藤、白僵蚕は涼肝熄風
③赤芍、川芎、当帰、地竜、夜交藤は養血活血
④牛膝は引熱下行 |
12-2)孙一民 |
●少陽経頭痛は肝腎不足、肝風。
柴胡、川芎で疏肝引経する。赤芍、土龞虫、穿山甲で活血通絡。細辛、白芷で袪風止痛、鼈甲、牡蠣、苦丁茶で平肝潜陽 |
16-1)徐篙年 |
気虚で陽亢 |
気虚で虚陽があるとき竜骨、磁石、天麻、鉤藤をいれる。
気虚で清気を升発できていない状態でも、障害にはならない。特に竜骨牡蠣を老師は好む。 |
3>张磊 |
便秘で陽亢 |
便干が頭痛の根本原因。濁気が下がらないから穢濁の気が上がる。そして頭痛がいえない。
清脳には紫貝歯、石決明、菊花、連翹、白微、夏枯草
通便には玄明粉(芒硝)、大黄、栝楼 |
12-1)孙一民 |
血虚で肝を養えず肝陽上亢になる。平肝熄風、安神明目、潤腸通便する、腸通すれば肝陽が降りる。釜底抽薪の意である(桑麻丸) |
6)程門雪 |
肝陽上亢で便秘>大黄は量が多いと下痢するが効果は早い。体格が良い人なおので大量に使った。用薬の鍵である。 |
1>刘树华p244 |
石膏 |
孔伯華老師(北京中医界四代井名医)は肝陽が旺盛のとき石膏をよくつかう。解説なし。→石膏は『割れるような頭痛に使用』焦樹徳とある。 |
13)孔伯華
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腎厥の頭痛 |
「腎気不足で気逆上行して頭痛が腎厥という」
夜中におこり、あるいは夜中に激しく、頭熱足冷、脈浮弦、沈案じて無力、舌質淡。
石決明24薄荷炭2.5木通2.5川芎2.5蒿本3細辛1白蒺藜9桑葉9菊花9玉真丸9 玉真丸は半夏、硫黄+石膏、硝石 |
6)程門雪 |
実用中医内科より |
天麻鉤藤飲、または杞菊地黄丸 |
|
3>平肝熄風剤
石決明 |
鹹寒、肝 |
平肝潜陽、清肝明目 |
牡蠣 |
鹹微寒、肝腎 |
平肝潜陽,軟堅散結、収斂固渋 |
珍珠母 |
鹹寒、肝心 |
平肝潜陽、清肝明目 |
玳瑁 |
甘鹹寒、心肝 |
平肝定惊、清熱解毒 |
紫貝歯 |
鹹、平、肝心 |
鎮惊安神、清肝明目 |
代赭石 |
苦寒、肝心 |
平肝潜陽、降逆止血 |
釣藤鈎 |
甘微寒、肝心包 |
熄風止痙、清熱平肝 |
天麻(中薬学) |
甘平、肝 |
熄風止痙、平肝潜陽 |
天麻(本草備用) |
辛温、肝 |
天麻(神戸中医) |
甘微温 |
疾藜子 |
苦辛平、肝 |
平肝疏肝、袪風明目(止痒) |
決明子 |
甘苦微寒、肝大腸 |
清肝明目、潤腸通便 |
穭豆衣 |
甘平、肝 |
溶血平肝、滋陰清熱 |
全蠍 |
辛平有毒、肝 |
熄風止痙、解毒散結、通絡止痛 |
蜈蚣 |
辛温有毒、肝 |
熄風止痙、解毒散結、通絡止痛 |
白僵蚕 |
鹹辛平、肝肺 |
熄風解痙、去風止痛、解毒散結
(化痰軟堅、袪風止痒) |
地竜 |
鹹寒、肝脾、膀胱 |
清熱熄風、平喘、通絡、利尿 |
罗布麻 |
淡渋微寒、肝 |
平肝清熱、降血圧、利水 |
★石決明、牡蠣は平肝潜陽が主、釣藤鉤、天麻、全蠍、白僵蚕は熄風解痙が主である。
天麻は熄風解痙>平肝潜陽であり、治療対象は、痙攣>眩暈>頭痛になる。
よって、天麻を使う人と使わない人がいる。
4>妙法解析13)の孔伯華老師(北京中医界四大名医)より
頭痛10症例あり、ほとんどが肝陽上亢、肝火である、
1)柔肝袪風 |
男、偏頭痛、左眼の上が痛、筋絡は跳痛、脈細伏数 |
2)肝陽極盛 |
頭部に突き上げ、左偏頭痛、左目牽引痛、目紅く、脈弦大、左関盛 |
3)肝旺脾湿、虚陽 |
近頭部、左偏頭痛、むせぶと咳痰、素体は肝旺脾湿、虚陽易動、脈弦滑 |
4)肝熱気逆 |
時に上犯、妊娠して嘔吐煩急、脈弦滑、両関盛→清熱安胎 |
5)肝陽上犯 |
風邪あり、頭部昏痛、左に多い、味なし、舌苔白、脾湿、脈弦滑数 |
6)肝陽旺脾湿盛 |
頭痛煩躁、便干、脈弦滑 |
7)肝熱陰虚 |
頭痛、疲れで酷い、夢多い、口渇、白膩、脈滑、左関大、 |
8)肝陽過旺 |
犯清陽、後頭頭痛、脈左関盛、 |
9)肝熱 |
偏左頭痛、疲れで酷い、肺胃燥、口渇熱、脈弦大 |
10)肝陽上亢 |
脾湿郁が経絡に、辺右頭痛、鼻水、脈弦滑数大、左関盛、 |
10例中の使用頻度は
石決明⑨代赭石⑧旋覆花⑧辛夷花⑧磁石④石膏⑤黄柏④知母⑦白蒺藜④
竜胆草⑤白芷⑥薄荷④竹茹④桑寄生⑤蓮子④荷葉⑤紫雪丹⑤
牛膝②谷芽②枳実②黄芩③滑石②石斛②辰砂③杏仁③地骨皮②栝楼②菊花③
先ほどの肝陽上亢と、石決明⑨代赭石⑧旋覆花⑧白蒺藜④竹茹④牛膝②は同じく多いが以下の特徴ある。
1)天麻、鉤藤、竜骨がない! 牡蠣、珍珠母は1例のみ、
2)磁石は④ある
3)菊花③、川芎①すくないが辛夷⑧白芷⑥が多い。
4)肝陽が旺盛のとき石膏⑤を使う。
石膏は『割れるような頭痛に使用』焦樹徳とある
5)荷葉、紫雪丹をつかっている
6)牛膝、桑寄生、蓮子で補肝腎している
7)黄柏④知母⑦が多い
(2)痰濁上擾の頭痛、 7老師の9症例では(すべて妙法解析の例)参考資料3
●半夏⑦茯苓③枳実③陳皮⑤竹茹②党参③菊花③白芍②黄連②天南星②山梔子②
牛膝②川芎②呉茱萸②牡蠣②鉤藤①石決明②天麻②
1>導痰湯(二陳湯+枳実、天南星)が主体のようである。
痰濁上擾頭痛なら一般には半夏白朮天麻湯であるが、天麻の使用は2/9例ですくない。●脾胃論で「太陰の痰厥頭痛は半夏でないと除けない」という
2>痰濁上擾の頭痛には濁を下すためになんらかの下降させる薬がある
天麻、枳穀、牛膝、呉茱萸、牡蠣、鉤藤、石決明、紫石英。紫貝歯、玉真丸(半夏、硫黄、石膏、硝石)旋覆花、沈香、蒺藜子
分析
①一つは平肝熄風(天麻、牡蠣、鉤藤、石決明、紫石英、紫貝歯、蒺藜子)
②二つ目は引経薬、牛膝、呉茱萸、旋覆花、沈香、枳穀、石膏
すなわち、痰濁が上に上がるには肝風と陰気上逆と、胃気上逆などの気逆が関与している。→石膏もある→胃熱、陽明熱、割れるような頭痛。
3>痰濁あっても党参使用はすくない。使う場合は
6)程門雪(食欲なく味がしない) 8)黄建(食べるとはく、胃脘張痛)
18)谭日强(食欲なし)
老中医のコメント
痰厥頭痛 |
脾が弱くて痰濁つくり、陽明経にそって上攻して頭痛起こす。
芎辛導痰湯(川芎、細辛で頭風をとり、二陳湯+枳実、天南星)が良い処方である。 |
11)曾绍裘 |
●「干嘔して涎沫をはき頭痛するは厥陰の寒気が上逆、手足厥冷の者は寒気内盛である、食べると吐くものは胃寒で食をうけないからだ」脾胃論で「太陰の痰厥頭痛は半夏でないと除けない」だから半夏、呉茱萸、陳皮使用。補胃のために党参、大棗。 |
8)黄建 |
●半夏白朮天麻湯は李東垣作で「痰気上昇して、眩暈を伴う頭痛」に良い。痰厥頭痛である。 |
18)
谭日强 |
虫類 |
全蠍は良い通絡止痛の薬
疼痛長いと、穿山甲6白僵蚕15 |
刘树华 |
白僵蚕、水蛭は活血通絡して頑疾をとる |
张晋云 |
木瓜 |
脾胃を調和し緩急止痛する |
刘树华 |
実用中医内科より |
半夏白朮天麻湯+白蒺藜、蔓荊子 |
|
(3)瘀血頭痛 症例は少ない、 現代名中医から4例。
妙法解析から3例、計7例
川芎⑦当帰⑥赤芍④桃仁②紅花③丹参③沢欄②穿山甲②土龞虫②牛膝②
菊花⑤白芷④蔓荊子③蒿本②地竜②白僵蚕②柴胡②夏枯草②鉤藤②白蒺藜②
石決明②細辛②生地黄②炙甘草②
川芎 |
袪風活血止痛湯(すべての頭痛に対応した自作)
川芎9~20白芷9菊花10蔓荊子10細辛3~9延胡索9
①川芎>頭痛の聖薬。血虚の時、多量だと傷陰するので注意。15~60g使用
②菊花、蔓荊子での清熱で川芎、白芷の温燥の弊を抑制する。(菊花、蔓荊子-川芎、白芷) |
7>刘树华 |
「瘀血頭風は病が永く癒えず、痛点が固定限局している」なら瘀血頭痛である。症状としては刺痛であり、または鈍痛で割れそうな痛みである。川芎は君薬、当帰は川芎の辛温消散の弊害を防ぐ。(当帰-川芎) |
金实 |
川芎は頭痛の用薬だが癒えないときは引経薬を用いる。柴胡は引薬で上行させる(柴胡-川芎) |
金实 |
川芎は諸薬を上行させる |
张晋云 |
川芎、
菊花 |
川芎、菊花は散風の薬で頭痛によく使う。川芎は風寒いがいにも気滞血瘀頭痛、内傷頭痛に使える。温燥なので肝腎陰虚には不適。菊花は甘涼益陰で平肝潜陽できるので邪熱上擾の頭痛、肝腎陰虚頭痛に使える。 |
董建華 |
肝胆熱上擾でも川芎使った。
→川芎は清気をあげるので脳中の濁気が自然と下がる。
芍薬24柏子仁18玄参18亀板18竜胆草9川芎1.5菊花3甘草9 |
張錫純 |
瘀血頭痛 |
丹参、赤芍、牛膝、桃仁、紅花 |
7>寇建新
p271 |
充蔚子、四物湯で活血する |
施今墨 |
瘀血頭痛と
防風、
白芷、
蔓荊子 |
風は上浮するので頭痛はほとんど風と関与する。
薬量は少なくする。上焦は羽のようなので、軽くないと上がらない。 |
杨海清 |
頭頂には風だから行ける。瘀血頭痛でも上行の薬がないと効果ない。それで防風、白芷、蔓荊子使う。 |
金实 |
虫類 |
久痛入洛になると草木では効果弱い、虫類で捜剔する
>穿山甲 |
8>金实 |
全蠍は良い通絡止痛の薬
疼痛長いと、穿山甲6白僵蚕15 |
刘树华 |
白僵蚕、水蛭は活血通絡して頑疾をとる。 |
张晋云 |
●瘀血、受外風>遊走性で頭頂痛だから袪風止痛する。羌活、蒿本。しかし頑固性頭痛であるから、久病必瘀、久病入洛から土龞虫、使う。 |
16-2)
徐篙年 |
活血には
川芎、当帰、赤芍、桃仁、紅花、丹参、地竜、五霊脂。また沢欄も使用。 |
8>金实 |
肝陽上亢、瘀血 |
①涼肝薬物は清脳でき、熄風は神経を伸びやかにできる、活血薬は血液循環改善する
②羚羊角、石決明,桑葉、菊花、白蒺藜、夏枯草、連翹、鉤藤、白僵蚕は涼肝熄風
③赤芍、川芎、当帰、地竜、夜交藤は養血活血
④牛膝は引熱下行 |
12-2)孙一民 |
活血通絡 |
●少陽経頭痛は肝腎不足、肝風。
柴胡、川芎で疏肝引経する。赤芍、土龞虫、穿山甲で活血通絡。細辛、白芷で袪風止痛、鼈甲、牡蠣、苦丁茶で平肝潜陽、 |
16-1)徐篙年 |
実用中医内科より |
通窮活血湯+全蠍、蜈蚣、五霊脂、地竜。 |
|
(4)気滞
気滞頭痛 |
袪風活血止痛湯(すべての頭痛に対応)
川芎9~20白芷9菊花10蔓荊子10細辛3~9延胡索9
+柴胡、香附子、仏手、枳穀 |
寇建新 |
(5)気虚頭痛
1)李東垣は補中益気湯加減で諸頭痛に対応した。曰く
「もし頭痛あれば、加蔓荊子3分、もし頭痛激しければ川芎2分、もし頂脳痛なら蒿本5分加える。もし苦痛あれば細辛2分加える。諸頭痛はこの4味で足りる」
1分は0.37g
頭昏、頭脹 |
①清涼透散の中薬(菊花、蔓荊子、谷精草、荷葉)
+補中益気湯を使うが、とくに荷葉を重要視する。 |
张磊
気虚頭痛にたいし補中益気湯使う |
荷葉>苦渋平、心肝脾。清暑利湿、升発清陽、散瘀止血(中薬辞典) |
気虚陽亢頭痛 |
竜骨、磁石、天麻、鉤藤は清気を升発するのに障害にはならない。特に竜骨牡蠣がよい |
余熱 |
二花、連翹+補中益気湯 |
気虚血瘀頭痛 |
菊花、蔓荊子は上向して頭目止痛する、一熱一涼で気機を調節できる。 |
1>刘树华 |
四君子湯
+黄耆 |
唐老師は脾腎から入手する。黄精は潤肺滋陰できる。この処方は、血管拡張性頭痛に良い。血管収縮性頭痛には効果悪い。 |
唐培位 |
気虚頭痛 |
袪風活血止痛湯(すべての頭痛に対応)
川芎9~20白芷9菊花10蔓荊子10細辛3~9延胡索9
+党参、黄耆、白朮 |
7>寇建新 |
実用中医内科より |
順気和中湯(補中益気湯+蔓荊子、川芎、細辛) |
|
(6)血虚頭痛
血虚肝旺の頭痛 |
四物湯加味
脾胃が良くないと気血生じず、薬は効かないので
①党参、白朮入れる、さらに
②木瓜いれて>脾胃を調和し緩急止痛する
③川芎>頭痛の聖薬。血虚の時、多量だと傷陰するので注意。15~60g使用(当帰≧川芎の考え方がある) |
1>刘树华 |
肝陰上逆(脾腎虚寒)の頭痛 |
呉茱萸湯合四物湯+●蒿本、防風、羌活で袪風散寒止痛 |
1>刘树华 |
血虚頭痛 |
袪風活血止痛湯(すべての頭痛に対応)
川芎9~20白芷9菊花10蔓荊子10細辛3~9延胡索9+枸杞子、阿膠、生地黄,熟地黄 |
7>寇建新 |
陰血不足 |
補中益気湯+白芍、知母、枸杞子 |
3>张磊 |
腎精不足 |
補中益気湯+莵茲子、淫羊藿、補骨子、枸杞子、附子 |
実用中医内科より |
加味四物湯(四物湯+蔓荊子、菊花、黄芩、甘草) |
|
参考>臨床中医内科学では気血虚頭痛には
補中益気湯合四物湯が基本、脾胃補うため黄耆、人参が大事。血虚が主なら四物湯だが、風薬を入れてはならない。1>刘树华では袪風剤あり。 |