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    面皰 その1 H24 6月10日
 
  • ニキビの弁証分類は教科書による差が大きい。西洋医学的分類を参考にして、分類の妥当性を考えてみたい。

1)症候診断学より

肺経郁熱

 

毛嚢に一致した丘疹。気分熱。肺経の熱(肺臓ではない)は鼻の周囲に多くみられる、または前額。トウモロコシ大、白い栓を絞り出せる。ときには黒い面皰になる。少し痒い。口鼻が干燥し、大便干、
やや紅舌、薄白苔または薄黄苔、脈浮滑

 

肺経郁熱>枇杷清肺飲
(人参、枇杷葉、甘草、黄連、桑白皮、黄柏)

胃熱

毛嚢に一致した丘疹。肺経の熱と同じく気分熱。口の周りに多くみられる。または背中、胸にある。トウモロコシ大、白い栓を絞り出せる。ときには黒い面皰になる。顔には油が多い、毛穴は開いている。
多食、口臭、口干、舌干燥、大便秘結、紅舌、膩苔、脈沈滑有力

胃熱>調胃承気湯
(大黄、甘草、芒硝)

血熱

血分熱。
顔面頬部に散在する潮紅色の丘疹。米粒大、口鼻周囲と両眉間にできやすい。顔面には常に毛細血管拡張あり。熱にあったり、ストレスで面部潮紅する。自覚的に灼熱感ある
月経前に多くなる。大便干燥、小便黄色、舌尖紅、薄苔。
脈数滑。

血熱>桃紅四物湯、
涼血五花湯
(紅花、鶏冠草、凌霄花。玫瑰花、板藍根)

毒熱

顔面に米粒大の丘疹、丘疹の頂はつねに小膿疱ある。周囲は少し発赤している。自覚痛あり。膿疱はひっきりなしに起こる。膿疱がきえたあと陥没性の小瘢痕になる。ミカンの皮の様に。背中や胸にも及ぶ。大便干燥、便秘、
舌紅、黄燥苔、脈弦滑あるいは数

毒熱>五味消毒飲
(金銀花、野菊花、蒲公英、紫花地丁、天葵子)

湿毒

  • 顔面部、背中の米粒大の丘疹以外につねに、大豆大のあるいはサクランボ大の結節、嚢腫がみられる。皮膚から少し盛り上がっている。
  • 重症になると感染して膿疱になり紅くはれ痛み、頭痛、発熱になる。 皮膚の油は比較的に多い、

舌暗紅、黄苔または白苔。脈緩または沈渋

湿毒>除湿解毒湯
(萆薢、薏苡仁、山帰来、車前子、大豆黄巻、沢瀉、板藍根、赤芍)

2)出典による相違点。

症候診断学

教科書

妙法解析

肺経郁熱>枇杷清肺飲
    気分熱。鼻の周囲に多い。または前額。トウモロコシ大

肺胃血熱>枇杷清肺飲
赤い丘疹が主
紅舌、薄苔、脈浮数

肺経風熱>枇杷清肺飲
赤い丘疹が主、少し痒み
紅舌、薄黄苔、脈浮数

胃熱>調胃承気湯
気分熱。口の周りに多い。または背中、胸。トウモロコシ大

 

 

血熱>桃紅四物湯、
涼血五花湯
潮紅色の丘疹。
毛細血管拡張。面部潮紅。自覚的に灼熱感

 

 

毒熱>五味消毒飲
小膿疱。周囲は少し発赤。自覚痛あり。

胃腸湿熱>茵陳蒿湯
膿疱が主。赤くはれて痛み有、便秘、尿赤、食欲不振、腹脹、黄膩苔、脈滑数

湿熱蘊結>竜胆瀉肝湯

赤くはれて痛み有、膿疱あり、
口臭便秘、尿赤、舌紅、黄膩苔、脈滑数

湿毒>除湿解毒湯
1)結節、嚢腫。少し盛り上がる。
2)重症になると感染して膿疱になり紅痛、頭痛、発熱。

 

(萆薢、薏苡仁、山帰来、車前子、大豆黄巻、沢瀉、板藍根、赤芍)

痰湿>大黄シャチュウ丸合散結霊

  • 結節、嚢腫、瘢痕が主。疲れ、便溏、薄苔、胖、脈濡細

(大黄、黄芩、甘草、桃仁、杏仁、芍薬、干地黄、乾膝
虻虫、水蛭、土龞虫、セイソウ)(白膠香、炙草烏、五霊脂、地竜、木べつ子、乳香、没薬、当帰、香墨、石菖蒲)

痰湿>海藻玉壺湯

  • 嚢腫を形成、食欲ない、

便溏、薄苔、淡胖、脈滑

(海藻、昆布、半夏、貝母、海帯、青皮、陳皮、連翹、当帰、川芎、独活、生草)

参考>症候診断学では、肺経郁熱、胃熱のにきびの丘疹の色の記述はない。「時には黒い面皰になる」から推測すると、西洋医学的には白い面皰である。しかし、教科書、妙方解析からすれば、赤い丘疹が考えられる。郁熱、胃熱だから、やはり赤い丘疹であろう。
3)西洋医学的分類
1)白いニキビ(非炎症性)
皮脂が毛穴につまった状態。ポツンとした小さな白い点に見えますが、見逃してしまう場合も。皮膚の内側では、毛包(もうほう)が広がるとともに、アクネ菌が増え始めます。(一番初期段階のニキビ)http://www.nikibi-hifuka.jp/about/img/kin_pic02.jpg

2)黒いニキビ(非炎症性)
http://www.nikibi-hifuka.jp/about/img/kin_pic03.jpg白ニキビの毛穴が開き、メラニン色素や酸化された皮脂などによって黒く見える状態。開放ニキビともいわれる。シミや小さなホクロのように見えたりする。無理に取るとニキビ跡になったり雑菌により化膿してしまう。

 

3)赤いニキビ(炎症性、非化膿性)
白ニキビが悪化し、炎症が起きた状態。毛包(もうほう)では、増殖したアクネ菌が盛んに活動しています。炎症を引き起こすさまざまな物質が、このときにつくられてしまいます。http://www.nikibi-hifuka.jp/about/img/kin_pic04.jpg

4)化膿したニキビ(炎症性、化膿性)
http://www.nikibi-hifuka.jp/about/img/kin_pic05.jpg赤ニキビがさらに悪化し、炎症が激しくなった状態。てっぺんに黄色い膿(うみ)が見えるため、黄色いニキビといわれたりします。皮膚の内側では、アクネ菌が生んだリパーゼが薄くなった毛包(もうほう)の壁を壊し、炎症を起こす物質が一気に外へ…  ニキビの炎症がまわりに広がってしまいます。 さらに、重症化すると、ニキビ痕(あと)が顔にできてしまうおそれがあります。
5)(紫ニキビ)(化膿性、結節性)
紫ニキビは紫ごりごりニキビとも呼ばれていて、触るとごりごりした感触があります。赤黒く大きめで痛みはなくふっくらと盛り上がっているニキビです。正式名称は結節性ニキビといい、潰すと黒い血と膿が混ざったものが大量にでてくるのが特徴です。
炎症を起こしているという点では赤ニキビと同じですが、紫ニキビは、赤ニキビよりさらに奥深くで炎症を起こしているので、真皮の部分まで広がっている場合もあります。真皮は一度キズついてしまうと治りにくいので、紫ニキビができてしまうと、ニキビ跡ができてしまう確立は非常に高くなります。
4)牧野先生(皮膚科)の分類

風寒

炎症反応のない面皰が前額部や頬部に多発する。発赤がなく、放置すれば皮疹は長期間、同じ状態を持続するため治癒しにくい・

桂麻各半湯、葛根湯で炎症を起こし治癒機転を働かせる。

風熱

非化膿性面皰型
面皰に少数の細菌が繁殖し、そのリパーゼにより皮脂が加水分解され遊離脂肪酸となって、面皰壁を破壊して炎症が周囲におよぶ。その結果、周囲に赤みを伴う典型的なざ瘡になる。

十味敗毒湯
清上防風湯

熱毒

膿胞型
頬部を中心に赤黒い膿疱が多発して皮膚に瘢痕を残して治癒するタイプ。ぶどう球菌の細菌感染を伴う。

黄連解毒湯
荊芥連翹湯

脾胃不和

口の周りや顎に多発する。
脾胃の機能がっ失調して湿熱の邪が上擾して、ざ瘡を生じる。
口苦、黄膩苔、脈滑数

半夏瀉心湯

瘀血

月経前増悪型
下顎付近に赤紫のざ瘡が多発。瘢痕、色素沈着を残しやすい。
紫舌、脈渋

桂枝茯苓丸加薏苡仁
桃核承気湯

肝気郁結

ストレス増悪型
ストレスのよって肝気欝血して郁熱が顔面に上擾してざ瘡を生じる。紅舌、脈弦数。

大柴胡湯
柴胡桂枝湯

考察>
ざ瘡の漢方治療には、他の疾患と同様に全身的な身体状況が考慮されねばならない。しかしながら、述べ10万人以上のニキビの漢方治療を行ってきた経験から言えば、体力の強弱、腹診、四診の一部は、面皰の治療に限って言えばほとんど意味をなさない。重要な点は皮疹の注意深い観察である。発生部位、色調、数、時間的な変化、皮膚に触れた際の触感、圧出した内容物などを検討する。全身的な症候のうち、消化器系の診察は皮疹の観察に次いで重要である。(ただし、前述のとおり腹診は重要でない)舌の観察が重要である。胃腸の状態は、舌診により、ニキビの治療に必要な情報は多数得られる。
6)分類の再検討

分類

牧野先生

教科書

妙法解析

症候診断学

まとめ

白い面皰
~黒い面皰

風寒
桂麻各半湯

痰湿
大黄シャチュウ丸合散結霊

痰湿
海藻玉壺湯

湿毒?
除湿解毒湯

痰湿
瘢痕化して黒くなるのは瘀血だろう

赤い面皰

風熱、
十味敗毒湯、清上防風湯
脾胃不和
半夏瀉心湯

肺胃血熱
枇杷清肺飲

肺経風熱
枇杷清肺飲

①肺経風熱、
枇杷清肺飲
胃熱;調胃承気湯(気分の熱)
②血熱(血分の熱)桃紅四物湯、

湿熱+肺経風熱
(湿熱+外感風熱)で気分ないしは血分に停滞する

膿んだ面皰
(赤い丘疹で頂に小膿疱)

毒熱
(赤黒い)
荊芥連翹湯

胃腸湿熱
茵陳蒿湯

湿熱蘊結
竜胆瀉肝湯

毒熱
五味消毒飲

毒熱
(湿熱+外感毒邪

赤黒い面皰
(紫ニキビ)

瘀血
桂枝茯苓丸加薏苡仁

 

 

毒熱
湿毒の重症型
五味消毒飲

毒熱+瘀血(瘀熱)
±陰虚(陰液消耗)

その他

肝郁
大柴胡湯

 

 

 

肝郁

7)病因病機と分類


<紫にきび>
(湿熱+外感毒邪+瘀血)

解説>
①毒熱とは湿熱+外感毒邪、または湿熱の熱がひどくなり毒熱なった者であろう。
②肺胃血熱とか肺胃郁熱の表現があるが、刘渡舟は「食積、胃熱が経を上行して肺経に客す。だから肺胃郁熱」としている。その郁熱が気分にある場合もあれば血分にいる場合もある。血分にあれば肺胃血熱。
③白いにきびは皮脂が毛穴に詰まった状態であるから、風寒よりは痰湿であろう。寒にて毛穴が収縮しているなら、暖にて容易に毛穴が開くはず、難治性なら痰湿だろう。しかし治療で毛穴を開く方法は有効性あるかも。 症例13(白いにきび)

8)問題点:ニキビの気分熱と血分熱の違いはどこか?
(1)たとえば症例9では肺熱血熱としている。


9)
赵健雄
①赤いニキビ~膿んだニキビの移行型

肺热血热

額、頬、下顎に散在する丘疹、頬には嚢腫、結節で紅色、頂部に小膿疱あり、舌紅、黄膩苔、脈数

 

枇杷叶,生地黄10,黄芩12,山梔子,杏仁10,石膏15,桑白皮10,茯苓15,车前子,牡丹皮,白花蛇舌草10,甘草6

  • 「医宗金鑑、肺風粉刺の証は肺経血熱であり、いつも鼻面におこり、キビのかすの様、色は赤く腫れ痛み、白い粉汁を出す。肺から手を付けて宣肺化湿、清熱散結するのが良い。刺激物、油ものはひかえる」
●血熱とした「根拠は「医宗金鑑、肺風粉刺の証は肺経血熱」にありそう。気分の熱か、血分の熱かの鑑別は不十分である。処方内容も気分熱とるための枇杷葉、石膏、桑白皮、黄芩、があり、血分熱には生地黄、牡丹皮、山梔子の中薬がはいっている。
(2)症候診断学より
血熱  :血分熱。顔面頬部に散在する潮紅色の丘疹。米粒大、口鼻周囲と両眉間にでき
やすい。顔面には常に毛細血管拡張あり。熱にあったり、ストレスで面部潮紅する。自
覚的に灼熱感ある月経前に多くなる。大便干燥、小便黄色、舌尖紅、薄苔。脈数滑。
つまり、血分の熱とするには①毛細血管拡張、②面部紅潮、③灼熱感が必要である。

12)
陈德润

肺胃湿热瘀滞,血分蕴热
顔全体が紅色で丘疹が密にある、膿疱あり、硬結、局部の皮膚に色素沈着、瘢痕のいぼ、灼熱感あり、痒い、口干、小便黄色
舌尖紅、白苔、脈滑数

 

  • 牡丹皮,赤芍,生地黄,玄参10,地肤子,防风,漏芦,生甘草10,羊蹄,胡黄连6,苦参,苍术10,薏苡仁20,草豆蔻10

犀角地黄湯加減
1)連翹、防風は透邪外達する、連翹は瘡家の妙薬
2)後半につかった黄耆は托毒排膿で瘡家の妙薬
3)没薬は「推陳到新:古きを押し出し新しきを生む」の奇薬

  • 膿んだニキビであり、顔面紅潮で灼熱感あるので血分の熱。 瘢痕、色素沈着あるので瘀血も絡んでいる。(紫ニキビになりかけのニキビと考えられる。)
 
 
 

 

 
 
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