1)耳鳴りの弁証論治
以下に耳鳴りの弁証論治について記載しているが、症状をよく見ると、耳鳴り+
臓腑の症状がかいてあることが多い。 郁でおこる、とか外傷後起こるとかの鑑別はあるが、耳鳴りの性状からの分類は見られない。ただ気血両虚の場合、「音調は低くて細」と、唯一の記載がある。 |
実用中医内科からの弁証論治
風邪外襲 |
1)外感風邪>
突然耳鳴り、耳聾、頭痛、悪風、発熱、骨節酸痛、耳内瘙痒、苔薄白、脈浮数 |
清神散
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2)風熱上擾>
耳根と歯齦腫痛、寒熱、咳漱、口干、耳中疼痛、出血、流膿 |
防風通聖散 |
肝胆火盛 |
郁とか怒で突然耳鳴り、耳聾、頭痛面赤、口苦咽干、心煩易怒、不眠不安、脇痛、便秘結、舌質紅、苔黄、脈弦数 |
竜胆瀉肝湯 |
痰火郁結 |
両耳蝉鳴、時に閉塞して聾、頭昏沈重、胸悶、痰多い、口苦、二便不爽、苔黄膩、脈滑数 |
礞石こん痰丸 |
瘀阻耳窮 |
多くは頭部の外傷、または強烈な爆発音で傷つき、多くは突発的に耳鳴り、耳聾。長いと顔色は黒く、古い血が耳に流れる、或いは耳垢と陳血が結合する。舌質紫暗or瘀斑、脈渋 |
通窮活血湯 |
中気不足 |
耳鳴り、蝉の鳴き声,or時計が鳴る、水激の音。長くなると耳聾、疲れると酷い、耳中に空虚感、面は黄白、倦怠無力、神疲、納差、便溏、舌質淡、歯痕、苔薄白、脈細弱or大無力、 |
益気聡明湯or補中益気湯、 |
気血虧損 |
耳鳴り音調は低くて細、酷いと聾、顔は蒼白で華がない、頭暈心悸、気短無力、舌質淡、苔薄白、脈細無力。 |
八珍湯or人参養栄湯 |
腎精不足 |
耳鳴り、耳聾、日に日に加重、頭暈目弦、腰酸遺精、舌質稍紅、脈細数,or弱、四肢軟、腰冷、陽萎、舌質やや淡、苔薄、脈沈細 |
耳聾左慈丸or補腎丸 |
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2)そこで、他の本では、耳鳴りの性状の区別をどう書いているか、調べた。
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高等医药院校教材 |
中医症状鉴别诊断学 |
实用中医内科学 |
名家医案 |
风热 |
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耳鸣如刮风样
(風の吹くような音)并有耳闭胀闷感(並びに耳が詰まった感じを伴う) |
突然耳鸣
(突然に起る) |
如吹风样
(風の吹く音) |
肝火 |
耳鸣如闻潮声(潮騒のよう),
或如风雷声(かみなりの音),
耳聋时轻时重(時に軽く時に重)
每于郁怒之后,耳鸣耳聋突发加重(怒るとひどくなる) |
突然发作,(突然おこる)
耳鸣声如钟(時計の音),或如风雷声(雷の音)
或如潮水声(潮騒の様) |
郁怒之后突然耳鸣
(怒るとひどくなる) |
突然发作(突然起こる)
郁怒之后而发(怒るとひどくなる)
鸣声宏(hong)而阻
(大きくて荒い) |
痰火 |
蝉鸣不息(蝉の声様でやまない)
或呼呼作响
(ひゅーひゅー、びゅーびゅーと鳴り響く)
有时闭塞憋气(塞がって息が詰まる) |
两耳轰(hong)鸣,
(どかんどかん、ごーごーと、ごろごろ鳴り響く)
听音不清,(音ははっきりしない)
耳闭堵闷(耳がふさがる) |
两耳蝉鸣
(蝉の声様) |
鸣声宏而阻,
(大きくて荒い)
音感模糊,
(音感はあいまいである) |
肾精亏损 |
常闻蝉鸣之声(蝉の声),
昼夜不息(昼夜やまず)
夜间较甚(夜にひどい) |
病程往往较长(経過は長い)
鸣如蝉声,音低而微(蝉の声様で音は低くわずか) |
耳鸣耳聋日渐加重(日々酷くなる) |
鸣如蝉声,(蝉の声),昼夜不息(昼夜やまず) |
脾胃虚弱 |
耳鸣耳聋,劳而更甚,(動くとひどくなる)
或在蹲(dūn)下(xià)站起来时较甚(うずくまって立ちあがるときに酷い) |
耳鸣耳聋,劳倦加重(疲れると酷くなる) |
如蝉鸣,(蝉の声様)
或如钟鼓,
(釣鐘をつく音)
或如水激(水がぶつかって跳上がる音) |
每遇疲劳之后加重
(疲れると酷くなる) |
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2)―1 上記の耳鳴りの特徴のまとめ
風熱 |
突然におこり(急性耳鳴)、風の吹くような音。耳の詰まった感じもある |
肝火 |
突然おこり、怒ると酷くなる。雷(ごろごろ)潮騒(ざーざー)のような音。ときに軽く、時に酷い。
または時計のような音(ボーンボーン)または大きくて荒い音。 |
痰火 |
大きくて荒い音だが音はあいまいではっきりしない。ヒューヒュービュービュー。またはドカンドカン、ゴーゴー、ゴロゴロ。または蝉の声の様な音(ジージー)。また耳の塞がった感じを伴う。 |
腎精不足 |
経過は長く、昼夜止まず、夜に酷い。蝉の声の様で音は低い。徐々にひどくなる。 |
脾腎気虚 |
動くと酷く、疲れるとひどくなる。立ち上がるときに酷くなる。蝉の声のような音、釣鐘をつく音、水がぶつかって跳ね上がる音(ザバー、ザバー) |
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2-2)「中医耳鼻咽喉科臨床妙法絶招解析」より耳鳴りの音について考察あり。
现代中医对耳鸣亦积累了丰富经验。现根据文献复习,将其辩证论治规律简介如下。 耳鸣的一般辩证规律主要是,暴鸣多实,渐鸣多虚;耳鸣间歇,或日轻夜重多虚,耳鸣持续不歇多实;耳鸣音调低,声宏嘈杂多实,耳鸣音调高,鸣声尖细多虚。但也不尽然。
《景岳全书》卷27说;“耳鸣当辩虚实。凡暴鸣而声大者多实,渐鸣而声细者多虚;少壮热盛者多实,`中衰无火者多虚;饮酒厚味素多痰火者多实,清脉细素多劳卷者多虚。且耳为肾窍,乃宗脉之所聚,若精气调和,肾气充足,则耳目聪明;若劳伤血气,精脱肾惫,必致聋聩。故人于中年之后,每多耳鸣,如蝉鸣,如潮声者,是皆阴亏而然。”
これをまとめると
実 |
虚 |
暴鳴(きゅうに起る) |
徐徐におこる |
耳鳴りが持続的 |
耳鳴りが間歇で昼軽く、夜重い |
音は低音で、音は大きくてやかましい |
耳鳴りは高音で、か細い |
熱の多いもの |
冷え症のもの |
酒、厚味をよくとり痰の多いもの |
脈が細くて疲れやすいもの |
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耳は腎の窮。腎虚になると耳聾耳鳴になるので中年以後の蝉のような潮騒のような耳鳴りは陰虚が多い |
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「耳鼻咽喉科、妙法解析」より、老中医の耳鳴りの医案とその処方を分析してみた。中薬の分類を色分けした→(資料1)
以上から言えること
1)耳鳴りの特徴をとらえて弁証論治していること比較的すくない。
2)弁証については「耳鼻咽喉科、妙法解析」によると
腎虚4+2>気滞血瘀5>肝郁5-2、中気不足3の順で痰湿阻滞はない。
(注意>肝郁の弁証5例中、2例は陰虚が本なので、腎虚に分類しなおした)
「中医耳鼻咽喉科臨床妙法絶招解析」によると弁証の内訳は
腎虚>気滞血瘀>痰湿>中気不足>風邪
- 弁証分類にはないが気滞血瘀の耳鳴りも実際には多いようだ。
6)それでは気滞血瘀の耳鳴りの特徴はどうか?
4-1)谭敬书教授
気滞血瘀 |
甲高く細い耳鳴(急性1w)難聴、日軽夜重 |
4-2)王学让(四川)
気滞血瘀(舌暗脈弦) |
太鼓のような耳鳴,閉塞感
(急性1月) |
4-3)荣远明
気滞血瘀 |
脳鳴は雷のようで、
蝉鳴の様な耳鳴(急性1月)難聴。 |
4-4)徐鸿庆(北京)
気虚血瘀 |
夜中に目覚めてから耳鳴始まる(急性3日) |
8)李继昌
少陽経瘀血 |
ブーンブーンの耳鳴
時に大きく時に小。 |
①気滞血瘀(半年経過) |
耳鳴りはリズムあり |
②肝胆郁滞、気閉(3カ月) |
蝉の鳴き声 |
③血脈瘀滞(2年)屠金城 |
蝉の鳴き声、絶え間なくあり、夜に重い、 |
④気滞血瘀(7か月) |
高音の持続性耳鳴り。 |
⑤肝郁化火、痰火上擾(3日) |
潮の如く、雷の如く、大きくて休みがない。 |
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まとめると
気滞血瘀の耳鳴りは |
蝉声様、太鼓の様、雷の様、潮の様。絶え間なくあるが夜に酷い。高音性のときあり。 |
気滞瘀血の根拠は下記の様で舌脈所見のみで決めている人も多い。
4-1)舌暗紅欠潤、薄黄苔、脈弦緩尺弱 4-2)舌暗無苔、脈弦細 4-3)舌暗紅、薄白苔、脈弦 4-4)舌暗、瘀血点、薄白苔
8)脈弦。大きな音が少陽経絡を瘀阻した。
①滋陰瀉火で効果なく、舌紫、薄白苔、脈平
②脇下痛み、脈弦、薄白苔、舌淡紅
③月経血塊暗紅、舌薄白苔、脈沈弦渋:屠金城
④舌暗、脈弦⑤イライラ、口苦、便干、舌紅、黄膩苔、脈弦滑
- 谭敬书教授によれば、全身的に瘀血が見られず、脈と舌のみの所見であることもある。またそれもわずかのこともある。また屠金城は「耳鳴日久、入及血分。」として瘀血を考慮している。
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7)耳鳴りまとめ>気滞血瘀を追加した。
風熱 |
突然におこり(急性耳鳴)、風の吹くような音。耳の詰まった感じもある |
肝火 |
突然おこり、怒ると酷くなる。雷(ごろごろ)潮騒(ざーざー)のような音。ときに軽く、時に酷い。
または時計のような音(ボーンボーン)または大きくて荒い音。 |
痰火 |
大きくて荒い音だが音はあいまいではっきりしない。ヒューヒュービュービュー。またはドカンドカン、ゴーゴー、ゴロゴロ。または蝉の声の様な音(ジージー)。また耳の塞がった感じを伴う。 |
気滞血瘀 |
蝉声様、太鼓の様、雷の様、潮の様。絶え間なくあるが夜に酷い。高音性のときあり。 |
腎精不足 |
経過は長く、昼夜止まず、夜に酷い。蝉の声0の様で音は低い。徐々にひどくなる。 |
脾腎気虚 |
動くと酷く、疲れるとひどくなる。立ち上がるときに酷くなる。蝉の声のような音、釣鐘をつく音、水がぶつかって跳ね上がる音(ザバー、ザバー) |
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