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    ドクターエッセー 第23回  五行理論その1  
 

四君子湯から始まり六君子湯、安中散、人参湯、黄耆建中湯、半夏瀉心湯、麦門冬湯、黄連解毒湯まで、脾胃の疾患、治療法について書いてきました。漢方では脾胃をとても重要視します。それは、脾が五臓の中心に位置すること(十字の五行理論)と、整体理論からいえることです。 まず今回は一般的な五行理論(五角形の五行論)について、話してみます。五行とはいわば五臓のこと肝心脾肺腎をあらわします。それぞれの臓器はその特性から木火土金水(もっかどこんすい)と表します。いわゆる自然界の根源である木、火、土、金、水と呼応しています。
木(もく)の特徴は条達といって、木の枝のようにのびやかに成長する性質を表します。肝は疏泄作用(気をめぐらす)があるのと呼応します。時、季節では朝と春、色では青に対応します。火の特徴は温暖と向上です。心が昼間に活発に動いて身体活動をささ得るのと呼応します。時、季節では昼と夏、色では紅に対応します。土(ど)は生化、受納の作用があって、万物を生成する作用があり万物の母といわれます。季節では土用、色では紅に対応します。金の特徴は収斂といって、エネルギーを凝縮して閉じ込めていく過程をしめします。「肺は百脈を朝す」といって、経絡を統括しているのと呼応します。時、季節では夕と秋、色では白に対応します。水は滋潤、栄養するのが特徴です。睡眠によって腎陰をおぎないます。腎陰は身体の陰液の基本となるもので、睡眠によって補えます。時、季節では夜と冬、色では黒に対応します。
古の人は、木火土金水の間には促進関係があるのを見出します。そして次のように考えていきます。「木はもえると火を生じます。燃えたあと土にかえります。土の中で金属は生まれます。金属の表面では、空気が凝縮して水が生じます。木は水があることによって成長します。」臓腑でいえば、この順で生じていきます。肝が心を生じ、心は脾を生じ、脾は肺を生じ、肺は腎を生じ、腎は肝を生じるという順です。これを相生(そうせい)といいます。病の時は、心の病が脾の病になり、脾の病が肺の病になるとされ、これを母病及子といいます。相生は次々に循環している動的状態ですが、一方向への進行のみなら、過剰状態が生じます。それでブレーキ機構がいるわけです。それが相克(そうこく)です。木は土を克(こく)し、土は水を克していきます。その順序は木土水火金になります。五行理論ではこの相生、相克の関係があって動的平衡状態が維持されているのです。いわば、図に表したように、五角形の五行論になるわけです。肝気犯脾胃など(木が土を克す)は臨床でよくみられます。ただ注意すべきは、全てが五行にあてはまるわけではありません。古人の中には、これにこだわりすぎて失敗したことがあるのも聞いています。肺病をみて、母病及子から脾を治療するだけでは、肺病は治りません。昔はこういう失敗例もあったようです。 


 
 
 
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