第14回、15回で、四君子湯は弱脈、六君子湯は脈滑弱と書きました。そこで今回は、脈についてすこし解説してみます。脈を診る場合、左右の手首の橈骨動脈脈、(寸口脈)で診察します。橈骨の茎状突起の部位を関(かん)と言い、手側を寸、肘側が尺とします。まず中指を関に当てます。次に人差し指を寸にあて、薬指を尺に当てます。指先をそろえて、指の腹で脈をふれます。
触按するときは、軽く押さえてみる浮取、少し力を入れてみる中取、強く抑えて見る沈取があり、診察の時は浮、中、沈とみていきます。脈は28種類あってそれを区別して診断に応用するのですが、これを体得するには、かなり時間がかかります。以下にてすこし解説してみます。 浮脈とは脈が浅いところで、軽く押さえて(浮取で)、最も明瞭に触れる脈のことで、沈脈は沈取で触れる脈で深く抑えてわかる脈です。虚脈とは、軽く按じると弱弱しい脈で強く案じると触れなくなる脈を言います。実脈とは軽く按じても、強く按じても力強く感じるのが実脈です。これらが組み合わさると少し弁証できます。 たとえば、浮で実の脈なら表実証(外感病で実証)になります。浮で虚の脈なら表虚証(営衛不和)になります。沈で実なら裏実証になり、沈で虚なら裏虚証になります。裏実は臓腑の実証のことで、裏虚は臓腑の虚証といえます。
ところで実証、虚証の定義は日本漢方とは異なります。日本漢方では実証とは体が頑丈なものをさし、虚証とは体が虚弱で抵抗力の少ないものを指します。 中医学では実とは邪気盛んなれば実、正気虚すれば虚とします。この件についてはまたの機会にもう少し詳しく、説明します。
遅脈とは脈拍60以下の遅い脈を言い、寒証を表します。数脈とは脈拍90以上の早い脈を言い、熱証を表します。だから遅で実脈なら実寒証で、遅で虚脈なら虚寒証になります。実寒とは寒邪が侵入してきて、たとえば腹痛、腰痛起こす場合です。虚寒証とは腎陽虚とか脾陽虚などで体を温煦する作用が低下しておこる寒証をいいます。 細脈とは糸のように細い脈を言います。脈管の充満が減少するために細くなります。気血両虚(主に血虚)や湿邪を表します。逆に痰飲があると、脈は脈管の中で充満がでて、脈の拍動にころころ感が出てきます。まるで珠が盤上を転がるような感触です。これが滑脈です。 そろそろ、紙面が少なくなってきたので、残りの脈は、またの機会にはなすこととして、最後に弱脈について話します。弱脈とは沈で、細で、虚の脈をいいます。つまり弱脈は裏虚で血虚がある脈になります。四君子湯は脾気虚で気血生化が不調になります。それで弱脈がでてきます。六君子湯ではそこに痰飲が出てきた病態でした。ですから滑脈と弱脈のある滑弱脈になってきます。
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