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    ドクターエッセー 第14回  四君子湯  
 

今回から、エキス剤を分析しながら、臓腑の生理と病態を見てみようと思います。今回取り上げるのは、四君子湯です。この成分は人参、白朮、茯苓、甘草の4味と大棗、生姜からなります。昔は、生姜、大棗はどこの家にでもあり、方剤に入れるのが当然であったので、六味なのに四君子湯というようです。主要成分の人参はどこに効くかというと脾胃です。これを脾胃に帰経するといいます。主に元気を補い、脾胃をあたためて補います。甘くて温める作用があります。つまり甘くて温性の性質があります。酸、苦、甘、辛、鹹を五味といい、寒、熱、温、涼を四気といいます。つまり人参は甘温で、脾胃に帰経して、効能は大補元気ということになります。白朮も甘温で脾胃に帰経して、効能は健脾利水といいます。脾胃の働きを促進し、水はけを良くする作用があります。脾の作用には運化水穀、運化水液があります。栄養物質や水液を吸収して輸送する作用です。この作用を補うのが白朮です。人参の大補元気とは少し違います。人参は気を補い温めるのが主です。エンジンに暖かいガソリンを注入する感じです。白朮はエンジンを動かして物を輸送する感じです。茯苓の効能は利水健脾です。白朮が健脾利水ですから語句の順序が逆になっています。つまり茯苓は利水が主で健脾が従、白朮は健脾が主で利水が従の関係があります。

これをまとめたのが表1です。

脾の作用が低下するとき、多いのが脾気虚です。脾気が虚になったことをいいます。気が虚すとはどういうことか。まず考えてみましょう。まず。気の作用には5つあります。温煦(おんく)、推動(すいどう)、固摂(こせつ)、防御、気化(きか)の5つです。温煦とは温めることです。推動とは栄養物質、水液、血液などを押し動かすことです。固摂とは、水液、体液、血液などが身体から漏れないようにすることをいいます。防御とは外から外感(ビールスとか細菌とかの感染症)がやってきたとき防御することです。気化とはエネルギーから物質へ、物質から物質へ変化させることをいいます。たとえば血液から汗を気化します。腎において尿を気化します。

自然界の空気と、水穀の精微から宗気(呼吸や血液を推動する気)を気化します。こんなふうに表現します。脾の気が低下すると脾気虚です。脾は気血を生化(気化のひとつ)したり、水穀を運化します。これが衰えると、気血不足で疲れ、運化失調で、食欲不振、食後腹脹になり、水液も吸収が不十分になり便は軟便、下痢になります。これらの脾気虚を治す方剤が四君子湯です。

表1

生薬

四気五味、帰経

効能

人参    

甘微苦微温、脾肺

大補元気、補脾益肺生津止渇,安神益智

白朮      

苦甘温、脾胃

補気健脾、燥湿利水、止汗安胎

茯苓      

甘淡平、心脾腎

利水健脾、安神

甘草         

甘平、心肺脾胃   

補脾益気、潤肺止咳、緩急止痛、緩和薬性

生姜      

辛微温、肺脾

発汗解表,温中止嘔、温肺止咳

大棗      

甘温、脾胃

中益気、養血安神、緩和薬物

 
 
 
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