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    ドクターエッセー 第12回  肺の生理について  
 

今回は、五臓の最後の肺について説明します。肺にはいくつかの生理作用があります。肺は「呼吸を主る」、「宣発粛降を主る」、「行水を主る」、「百脈を朝する」「肺は治節を主る」の5つです。「呼吸を主る」の意は、まず肺は呼吸によって自然界の清気を吸い、体内の濁気をだします。そして、肺は宗気を生成して、気血を全身に散布する役目もあります。後者を、<一身の気を主る>ともいいます。あわせて「呼吸を主る」といいます。2つ目の「宣発粛降」とは肺気を発散することをいいます。体の上方と外方向への発散を宣発といい、下方と内方向への発散を粛降といいます。肺は上方に位置するので、どちらかというと、粛降が主の作用になります。肺は宣発粛降の作用を通じて、呼吸を主り、<心の行血作用>を補助したり、<通調水道作用>を行います。ここで、まず、宣発と粛降について、もう少し詳しく解説します。

「宣発」という上外方向への発散によって、呼気とともに、外へ濁気を排出します。また、脾から上輸された水谷の精微と津液を全身に運び、外方向では皮膚にまではこび、皮膚を滋潤濡養します。また衛気(脾で水穀の精微からつくられる)を全身や皮膚に散布します。衛気の作用は肌表をまもり、皮膚を温養し、?理(汗腺)を開閉することです。宣発作用によって衛気は全身の皮膚にまで行き届きます。代謝の終了した津液の一部は汗となり、?理から外へ出ますが、これは衛気により?理が開閉されることによりコントロールされています。「粛降」という下内方向への発散により、自然界の清気を吸いこんだ後、下方へ散布します。また脾から上輸された水谷の精微と津液を全身に散布して全身の臓腑を滋潤、栄養して各臓腑が正常な生理活動をできるようにします。また肺は水の上源といわれており、粛降作用は水道を通調し、水液を下輸します。その後は腎の気化作用により濁液尿となり膀胱に行き排出されます。また粛降作用により肺の清浄ができます。この宣発粛降は相対的な運動ですが、互いに依存して相互制約して初めて正常な状態が保てます。

3つ目の「行水を主る」とは水道を調達することをいいます。肺は華蓋(かがい)といい、五臓のうち最高の位置にあります。<水の上源>であり、水液代謝に関与します。一般に水液代謝は肺脾腎を主としています。この行水作用は肺の宣発粛降が原動力であります。4つ目の「百脈を朝す」とは、肺はすべての経絡と通じ、すべての血液はこの血脈と通じることを指します。そして肺呼吸にて、体内の清濁の気を交換して清気を含んだ血液を絶え間なく全身に輸送します。この作用は<心の行血作用>を補助しています。最後の「治節を主る」は心の気血津液をめぐらす作用を補助することを言います。また全身の気機の升降出入を調節することや水液代謝を主ることも含みます。

五行についていうと、肺は金に属します。性質は季節では秋、日では夕方。方角では西になります。森林で新鮮な空気を一息吸い込むと手足の先まで、新鮮な空気が満たされる感じがします。空気一息で、末端の酸素飽和度が上がるはずはありません。これは肺気が瞬時に宣発する作用であると考えられます。

 
 
 
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