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    ドクターエッセー 第3回  陰陽の特徴と不眠  
 

陰陽の特徴と不眠 前回の流れから、陰陽学説について解説してみよう。すべての万物は陰陽に分けられる。たとえば昼と夜、表と裏、温と涼、軽と重、明と暗、上と下、春と秋、夏と冬、男と女、動と静。(前者が陽、後者が陰)自然界の事象は対立する事象に分けられ、かつ統一している。昼と夜は対立しているが合わせて一日である。対立と統一が陰陽学説の基本である。陰の基本的性質は滋養、潤滑で、陽の性質は推進、温暖である。

陰と陽の関係には消長平衡もある。(その他は陰陽互根、陰陽転化など) 朝は陽が徐々に増えてきて、昼間が最高になり、夕方から夜にかけて徐々に減少する。つまり、朝起きた時はボーとしているが、だんだん動きが活動的になり、昼ごろにはパワー全開になる、しかし、昼すぎると眠くなり、夕方には疲れがたまってくる。陰は夕方から徐々に増えて、夜中に最高になる。夕方帰宅して、家ではゆっくりくつろぎ、睡眠をとる。夜中は熟睡の中にある。こうして、陰は補充され、明日への活力がうまれる。このように、陰と陽には消長増減があるが、生理的範囲内で相互協調している。これを動的平衡という。

ところが睡眠不足になると陰は補充できない。陰が不足するため滋潤作用が減り、口渇、唇干燥、動悸、こむら返り、眼瞼がぴくぴくしてくる。眠れば治るのだが、仕事で睡眠不足が続いてしまうと、逆に眠れなくなってしまうこともある。動的平衡関係が崩れたのだ。西洋医学なら睡眠導入剤、睡眠剤が処方される。しかしこれらは、習慣性があるのでなかなかやめられなくなる。

入眠障害は心火、心陰虚内熱による。心に実熱、虚熱があるときである。陰に対して陽が強すぎる状態である。普通、眠るとき体表の陽は体の深部の方に入っていく。夜中、陽は消滅しているのではなく、深部に入り陰と調和して潜んでいる状態である。ところが陽が強すぎる人は、陽が体表で動き回るので寝付けなくなる。そんな時、黄連で心火をとり、麦門冬で陰をおぎなえば大体7割の人は眠れる。(エキスなら黄連解毒湯と麦門冬湯)。 中途覚醒は心血虚か心陰虚である。陽の騒動は少ないので入眠できるが、陰が少ないので途中で陽が動き出す。酸棗仁、夜交藤、竜眼肉、百合、合歓皮がよい。これでも無理なら竜骨、珍珠母がよい。(エキスなら酸棗仁湯、帰脾湯だが弱い)。寝るとき陽が深部に入っていくのは、日常でも体験できる。うたた寝するとき、陽が深部に入っていく。体表の温煦作用が減り寒くなる。毛布が一枚恋しくなるのはこの理由による。

 
 
 
 
 
 
 
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